パワハラによる精神疾患が最多 過労死白書
厚生労働省は10月28日、2025年版過労死等防止対策白書(令和7年版)を公表しました。白書では、年々増加している精神疾患を原因とする労災の実態を分析し、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が最も多い要因であることを明らかにしています。令和6年度の精神障害による労災認定は過去最多の1,055件で、2010年度の約3倍に増えました。メンタルヘルスに関する労災が急速に拡大しており、働く人の心の健康が深刻な課題となっています。
白書によると、出来事別の認定件数では「上司等からのパワハラ」が224件で最多、次いで「仕事の内容や量の変化」が209件、「対人関係」が197件でした。職場の人間関係や業務負荷の増大が強いストレスとなっていることがうかがえます。また、教職員ではパワハラが原因となった割合が3割を超える一方、自動車運転従事者では1割強にとどまるなど、業種ごとに差がみられました。厚労省は「業種の特徴を踏まえた対策が必要」とし、よりきめ細かな対応を呼びかけています。
今回の白書では、外食産業の働き方にも焦点が当てられています。アンケートでは、過去1か月の平均的な1週間あたりの労働時間が「過労死ライン」とされる60時間以上だった人の割合が全体で14.9%に上り、特に「店長」が29%と突出しました。責任の重い管理職ほど労働時間が長く、職場に負担が集中している実態が示されています。
厚労省は、今後の重点施策として「職場の人間関係改善」「ハラスメント防止教育」「業務量の適正化」「長時間労働の是正」などを掲げています。企業にとっては、従業員の心身の健康を守る「健康経営」の視点が欠かせません。管理職への研修や相談窓口の整備、長時間労働を防ぐ仕組みづくりなど、日常的な職場環境の見直しが求められます。特に、ハラスメントを未然に防ぐためには、指導と圧力の違いを理解させる教育や、誰もが安心して声を上げられる仕組みが不可欠です。また、労働時間の把握と改善も重要です。長時間勤務が続く部署では、原因を分析し、業務分担や人員配置を見直す必要があります。さらに、定期的なストレスチェックや産業医面談、復職支援などを通じて、従業員の心のケアを継続的に行うことも大切です。
今回の白書は、精神疾患による労災の増加が個人の問題ではなく、職場や社会全体の構造的課題であることを示しています。企業が従業員の健康を守ることは、リスク回避だけでなく、組織の信頼性や生産性を高める投資でもあります。働く人が安心して力を発揮できる環境を整えることこそが、企業価値を高め、社会から信頼される組織づくりにつながるといえるでしょう。厚生労働省は今後も、過労死等防止対策の推進とともに、企業・労働者・行政が一体となって「誰もが健康に働ける社会」の実現を目指す方針を示しています。企業一つひとつがこの白書の内容を自社の課題として受け止め、実効性のある対策を進めていくことが、今まさに求められています。
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