特定技能外国人を雇用する企業の7割超で法令違反
厚生労働省は、特定技能外国人を雇用する全国の事業場に対して、2024年度に実施した監督指導・送検の結果を初めて公表しました。
全国の労働基準監督署が計5,750事業場を対象に監督指導を行ったところ、実に76.4%(4,395事業場)で労働基準関係法令違反が発覚しました。違反内容が「重大・悪質」と判断され送検されたケースは7件にのぼります。違反項目の中で最も多かったのは、「使用する機械等の安全基準」関連(24.0%)。次いで、「割増賃金の不払い」(17.2%)、「健康診断結果に基づく医師の意見聴取」(16.7%)、「労働時間管理」(15.4%)と続きました。さらに、「年次有給休暇の付与・管理」(12.2%)、「労働条件の明示」(10.3%)も1割を超えており、外国人労働者の就労環境における法令遵守体制の不備が広範囲にわたることが明らかになりました。分野別にみると、特定技能第1号外国人が多い社会福祉施設や建設業では、割増賃金関連の違反が最も多く、それぞれ29.3%・24.4%を占めました。一方、食料品製造業(40.4%)や工業製品製造業(33.2%)では、機械の安全基準に関する違反が目立つ結果となっています。
今回の結果は、単に外国人労働者を受け入れる企業の一部で法令違反があったという問題にとどまりません。
特定技能制度は、人手不足の解消と技能移転を目的として導入された制度であり、現場の安全・労務管理体制の成熟度を映し出す鏡でもあります。監督指導の対象となった約4分の3の事業場で違反が確認されたことは、「法令理解不足」や「現場任せの管理体制」が根深い課題であることを示しています。
特に、安全基準や労働時間管理、割増賃金の支払いといった基本的な労働法遵守の不備は、企業の信頼を大きく損なう要因です。外国人労働者は言語・文化の壁から不当な環境に置かれやすく、コンプライアンス体制の脆弱さがそのまま社会的批判に直結します。
そのため、今後の企業運営では、単なる「外国人雇用の受入れ」ではなく、多様な人材を安心して働かせる組織基盤づくりが重要になります。具体的には、①安全教育・作業マニュアルの多言語化と実施記録の整備➁労働時間・賃金データの一元管理➂健康管理・生活支援体制の整備④人事・現場管理者の意識改革等が求められます。
今後、特定技能や技能実習制度の再編・統合も進むなか、監督強化は確実に続きます。
企業は「採用」よりも「定着と安全」を重視し、外国人労働者を組織の一員として育成・保護する体制を整えることが、持続的な経営基盤の確立につながるでしょう。
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